序(しよ)
新玉(あらたま)の年(とし)のはしめ門(かと)に松竹(まつたけ)
もふくるも壽(ことふき)を粧(よそほ)ふならす哉(や)
人(ひと)として粧(よそほ)ひなくはあくめわきて
婦(をんな)はいかはかり美(いみじ)くとも脂粉(よそおふ)事(こと)は
皇(すべらき)の道(みち)なりしかはあれとよそほひ
ほとを過(すぐ)れは粧ひかえつて
川竹(かはたけ)のうかれ女(め)に似(に)たらむも
口をしよそほひは唯(たた)おんなの
礼(れい)なりと守(まも)りなはむべならむ歟(か)
天津雲(あまつくも)の上(うへ)にも紫(むらさき)を色(いろ)の第(だい)一と
定(さため)たまふは粧(よそほ)ひにもとつき給(たま)ふ歟(か)
さては絵本(ほん)江戸紫(ゑどむらさき)と題(だい)せり
朱(あけ)を奪(うはふ)といふひとゝともに
かたらしとしかいふ
宝暦癸未の冬臘月
 浪華禿帚子識