吾妻遊
武蔵野の広きくま/\はあまねく
人のいひふれしならひにして今さら言へく
もあらねともとより呉竹の四里四方に
して又そのもれたるもあめれやつかれ
さきに千々の里々を掌にとちめし仙家
の術ある事を夢見しより俄に此集に
こゝろさしありしかと折からの事にふれて
むなしく過にきことしはからすも駿城の
まもりに倍して四海波静なる御代にし
あれは此折から過さしと武城の唐丸
にたくしてこのことくさをいひやりぬ既に
日あらすして八百八巷の名所をさくりある
はたれかれのたはれたる歌そくはくを
おくりぬ撰なりて駅使に投して唐丸
によせぬたま/\撰者の名におふこと
離明輪工のともからはかたはらいたきわさ
となんいふめれとさらにやはとてかの仙壷公
の法術にならひひさこの駒に鞭打て
関の東をめくりぬれはとりあへす
吾妻遊となつけ侍る
寛政二戌とし初春 奇々羅金鶏しるす

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