紺屋(こんや)の明日(あす)あさてとかぞへたる日の
空色(そらいろ)に。初日朝の紅染(へにぞめ)をまじへて。
江戸紫(ゑどむらさき)の春(はる)の曙(あけぼの)名にしあふ。一(いち)
陽斎(ようさい)が上絵(うはゑ)をもて。春は華色(はないろ)に
白揚(しろあがり)の桜をうつし。秋(あき)は紅葉(もみじ)
がさねの板〆(いたじめ)にうるわしきをいろどる。
花(はな)の吾嬬(あづま)の二色(しき)絵(ゑ)に名所の雛形(ひながた)を
もて。我(わが)友かきの数寄屋連(すきやれん)の。反古(ほゞ)
染(ぞめ)ならぬたはれ歌(うた)に筆(ふて)の染色を
任(まかせ)て。纐纈染(くゝりぞめ)の流行(りうこう)せむ事を。
甘泉堂の応需(もとめにおうじ)。注文牒(てう)の端(はし)に
書付(かいつく)る者は。森羅亭「宝」