先(さき)に北尾重政勝川春章互(たかひ)に筆(ふんで)を下(くだ)して往々(わう/\)美(び)
人の容貌(ようほう)を戦(たゝかは)しむ今又北尾政演再(ふたゝ)ひ毛延寿(もうゑんじゆ)に
傚(なぞらへ)て花柳(くるは)の名妓(めいぎ)を画(ゑが)く誠(まこと)に眉(まゆ)は今戸(いまど)の煙(けふり)に似(に)て
淡(あは)く髪(かみ)は隋堤(ずいてい)の柳(やなぎ)も准(なぞらへ)て長(なが)し其(その)神(しん)を写(しや)す
るに至(いたつ)ては見(み)る人いかてか心(こゝろ)を動(うこか)さゞらんや加之(あまつさへ)
かたはらに佳人(かじん)の真蹟(しんせき)をもつて題(だい)す烏呼(あゝ)三千
の佳麗(かれい)は此一帙(いちぢつ)に存(ぞん)し五町の全盛(せんせい)は偏(ひとへ)に筆端(ひつたん)
より生(しやう)す爰(こゝ)に漏(もれ)たる楚腰越艶(そようゑつえん)は追(をい)/\貌(うつ)し
自筆を需(もとめ)ついて梅梨(ばいり)に寿(いのちなかふ)せんとす今此蝉(せん)
鬢(びん)を見る人猶(なを)後(のち)の鴉黄(あわう)を待(まつ)て心(こゝろ)を和(やは)らけ
給(たま)へといふ
 朱楽館主人題

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