絵本藻塩草序
文をもつて画(ゑ)の言(ことば)とし画をもつて文の質(かたち)と
するといえる事あり其かたちを秈(よく)なすものは
西川自得叟(じとくさう)なり今詩歌(しいか)はた狂句(きやうく)をあつめて
かたちを予にこふ人あり思ふに只わらはべのいた
つらことなれはとていなみしが是なんそれに
ひとしきものなれはとてふたゝびものし
給(たま)ふにわりなく西翁(さいをう)が草紙(さうし)を左(ひだり)にして筆(ふで)
を労(らう)して三まきとなせしかどいやしきことを
思ひてかつきするなる海女(あま)のくみ得(え)し藻塩(もしを)
草(ぐさ)と題(だい)しておくりはべる
 北尾花藍書