狩野元信の伝説
上巻6ウ:「古法眼筆僧正坊図評 左に図所は山中の魔■僧正の像之或日元信家に■人来て天狗の形を図せん事を求む元信いまた天狗を見す世に図像なし如何せんとおもゑり其夜夢中に老翁来て天狗のかたちを表す元信是てんくなりとしつて是を写す六尺余の紙上に像をなして先客に送る客よろこむて鞍馬寺に奉せんとす前日空陰高風をこり彼図天井をやふつて鞍馬寺に飛さる元信此よしを聞我なから奇なりとし■て左に役行者右に牛若両像を補筆して是を奉す元信において妙有事多しくはしくこゝにしるさす」
曽我ニ直庵の紹介
下巻3オ:「鷹 直庵(ちよくあん)と云人あり其性氏をしらす印文は曽我の直庵と有り蛇足(だそく)が族(そく)歟(か)鷹師なりとも云其岩木を画くをみれは永徳か流に遠し又人物を見れは■多(そくばく)なり天性鷹をよくして事においてくはし ほうきやうの毛すしをもよみおかくしとなり」
俵屋宗達の紹介
下巻4ウ:「草花 宗達(そうたつ)■俗性をとへは京の遊人なりと山楽が粉本(ふんほん)に倣ふ花草をよくす人物是につぐ余(よ)はまた是に次(つ)ぐ春秋の菜草(さいそう)をゑがくに金碧(きんへき)を以てつぶさにすいを引一風をなして世俗をよろこばしむ」
宮崎友禅の紹介
下巻5オ:「衣服の模様 友禅は其性氏不詳(つまひらかならす)衣服扇面畳紙の絵をなす都鄙(とひ)遠鏡(ゑんきやう)友禅もやうといひならはす布上に濃淡(のうたん)の絵具(ゑぐ)を施(ほとこ)す沢(さは)に流しあらふにすこしも具(ぐ)の落(おつることなし)画法(くはほう)の外に■■を得たり」
尾形光琳の紹介
下巻9オ:「草花 遠く聞ゆ光琳(かうりん)とて珍敷(めつらしき)軽筆(けいひつ)有当代ひとの心に応(わう)し老若是を玩(もてあそ)ぶ草艸(さう/\)と画(ゑが)く所を見るにまことの花壇(くはたん)を遠見(ゑんけん)する心地す草(さう)の極色(こくしき)などいふべく其鈍筆(どんひつ)なることばせをに雨のそゝぐがごとし」
鳥羽絵の紹介
下巻12ウ:「鳥羽絵 近頃より鳥羽絵(とはゑ)と名付(づ)け狂画(くるいゑ)を専(もつはら)にするあり古への僧正によるものか畜獣(ちくじう)禽鳥(きんてう)は風流ならすたゝ人物のみ異形(きやう)なり手足(しゆそく)の短長(たんちやう)小眼(しやうがん)大口(たいこう)人体(にんたい)をのそき風流をことゝす誠に五月雨のつれ/\秋の夜のともと成へき物は是なんへきかと覚ゆ」
雛屋立甫の紹介
下巻15ウ:「発句の趣画 立甫世にしれる通書画(しよぐわ)ともにまめやかにして清玩(せいくはん)なり画てい其上に一句一首をそへ和才(わさい)のよけいに草画(そうくは)をなす事むべなる哉誰(た)が筆跡(ひつせき)を慕(したふ)ともみゑねども清潤にしてよく興趣にのる」