児童(じどう)教訓(けうくん) 伊呂波歌の序
往古(いにしへ)子(こ)ををしへるに父(ちゝ)は算数(さんすう)を教(をし)へ
母(はゝ)はもろ/\の和語(わご)女(をんな)もじを教(をし)ゆ故(かるがゆへ)に
父(ちゝ)をかずといひ母(はゝ)を伊呂(いろ)といふ伊呂(いろ)とは
字母(じぼ)の謂(いひ)なり其(その)むかし護命(ごみやう)空海(くうかい)の
作(つく)りたまへる歌(うた)の詞(ことは)によりて今(いま)に手習(てなら)
ふ児童(じどう)の伊呂波(いろは)とて口(くち)に唱(とな)へ耳(みゝ)にふれ
てさとしやすきを本(もと)とし四十七字(じ)を題(だい)
として各(をの/\)三首(しゆ)つゝのはいかい歌(うた)をつゞり
或人(あるひと)袖(そで)にし来(きた)りて梓(あづさ)にちりばめん
事(こと)を求(もと)む誠(まこと)に瑞穂(みつほ)の国(くに)ゆたかに常世(とこよ)
の浪(なみ)静(しづか)にして野(の)にうたひ腹(はら)を皷(こ)し
神恩(しんをん)に馴(なれ)て徒(いたつら)に日を送(をく)る輩(ともがら)の風俗(ふうぞく)
をしめす一助(じよ)ともなりなんものか其言葉(ことば)
の夷曲(ひなぶり)たるはいとはで此歌(このうた)の意(こゝろ)をあま
なひしらば作(つく)れる人の本意(ほい)ならめやも
神都書林 講古堂主書

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