右のたはれ歌(うた)はもとよりものしる人の
目(め)にもふるべき物(もの)にあらずたゞ僕(やつかれ)が子孫(しそん)の
教誡(けうかい)ともなして難波(なには)のよしあしをもしら
しめ伊勢(いせ)の浜荻(はまおぎ)のかた葉(は)なるも直(すぐ)なる
御代(みよ)に賞(かは)せられて名(な)におふ類(たぐひ)のごとく
かくつたなき言(こと)の葉(は)といへども当世(たうせい)画(ゑ)の
道(みち)の工(たくみ)いとかしこけばそれが筆(ふで)して歌(うた)
こゝろを模写(もしや)せしめは彼(かの)ちまたに飴(あめ)を商(あきな)
ふものゝよび笛(ぶえ)に引(ひか)れて児童(じどう)のもて遊(あそ)び
とも成(なり)女子(によし)の愚(をろか)なるものおのづから其(その)こゝろ
をあまなひ善(ぜん)に勧(すゝ)み悪(あく)を懲(こら)さは世(よ)の人の
笑(わら)ひ草(ぐさ)となるとも愚老(ぐらう)が本意(ほい)に叶(かな)へる成
べしと梓(あづさ)にちりばめる事とはなりけらし
 南勢野叟書

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