序文

序(しよ) 新玉(あらたま)の年(とし)のはしめ門(かと)に松竹(まつたけ) もふくるも壽(ことふき)を粧(よそほ)ふならす哉(や) 人(ひと)として粧(よそほ)ひなくはあくめわきて 婦(をんな)はいかはかり美(いみじ)くとも脂粉(よそおふ)事(こと)は 皇(すべらき)の道…

年立帰る旦より いとけなき御かたの詠とも なれかしと清長か画ける 初暦の下段に題しけるものあり 数もをのつから七種を得たり 万の宝此うちにありと永寿堂のぬし さらに乞ふて桜木に移し猶春ふかき 梅か香に子の日の松に千代をまかせむと 画風流の始に百万…

序 武(ぶ)はよく四海(しかい)の逆浪(げきらう)を静(しづ)め 智(ち)はよく万民(ばんみん)を安機(あんき)ならしむ 凡(およそ)将(しやう)の仁計(しんけい)士(し)の勇功(ゆうこう)は永(なが)く 不朽(くちず)千歳(せんざい)の後(のち)茶語夜談(さごやだん)に 嬰児…

絵本(ゑほん)浅紫(あさむらさき)序 花(はな)は上野(うへの)月(つき)は隅田川(すみだがは)の流(なが)れに影(かげ)ひろご りて猶(なを)前編(ぜんへん)にもれたるを究問(ねどひはどひ)の童蒙(わらんべ)の 詞(ことば)につきて紅翠軒(こうすいけん)の答(こたへ)の…

『絵本あけぼの草』 序(じよ) 新玉(あらたま)の春(はる)閑暇(かんか)なるまゝに童蒙(どうもふ) の業(わざ)なふしていたづらに日を 過(すご)すを感(かん)じ自(みづから)いたづらをせんも 長(おとな)げなく日を暮(くら)しかねしが不(ふ) 斗(と)荘周(そうしう)…

異国(ゐこく)一覧(いちらん)序(じよ) 東夷(たうゐ)やかふいふと嘘(うそ)南蛮(なんばん)となく 尽(つき)ちらし。北狄(ほくてき)なやつじやと 諸君子(しよくんし)の誹(そし)りをもかへりみず。西戎(せいじう) しあげた異国(ゐこく)一覧(いちらん)は。万国(ばん…

叙 絵本江戸土産(ゑほんえどみやげ)の原版(げんはん)は。今(いま)を去(さ)ること一百年(いつひやくねん)。宝暦(はうれき) のそのむかし。当時(たうじ)名高(なたか)き画工(ぐわこう)にて西村重長(にしむらしげなが)なるもの。 手(て)に成(なり)し跡(あと)を逐…

和漢(わかん)詞徳抄(しとくせう)序(じよ) やまと歌(うた)の徳(とく)はちからをもいれずして 天地(あまつち)を動(うご)かし眼(め)にみえぬ鬼神(おにかみ)をも あはれとおもはせ男女(をとこをみな)の中(なか)をも和(やは)らけ 猛夫(たけきものゝふ)のこゝろを…

誹諧名知折 連歌は雅言をもて章をなし 誹諧連歌は俗語をもて句を なす雅俗則文質也文質則 名と状なり凡句となす所の 四時の名をあつめし書古今 多しといへとも都鄙山海と へたちて状に疎き誹士すくな からす幸に門人花藍画を 業とす時々名によりて其状を 画…

北尾氏の紅顔たりし時写し置る 山野の獣類一本あり是を今新 に梓に上して幼童のたわむれ 草とせんと欲す又は鳥獣の画に 志ある人は其形象しれかたき 物少なからすこれに因て■■■ 大概を知るの便ともなりなんと 世におほやけにすることゝはなりぬ 書林鶴堂主人…

序 飛鳥(ひちやう)展足(あしをのへ)闘牛(とうぎう)竪尾(をゝたつる)雪中(せつちう)芭蕉(ばせを)はいづれも 画家(ぐはか)の虚妄(きよもう)ながら金岡(かなをか)悪槐(あくわい)の馬(むま)の稲(いね)を はみ貞信公(ていしんこう)の郭公(ほとゝぎす)声(こへ)を発…

序(しよ) 時津風(ときつかぜ)鳴(なら)さぬ枝(えだ)に囀(さへず)る鶯(うくひす)濁(にごり)なき代(よ)の 水(みづ)に住(すむ)蛙(かはず)もみな敷島(しきしま)の道(みち)直(すぐ)に豊(ゆたか)なる初(はつ) 春(はる)の家土産(いゑつと)幼稚(おああひ)の目(め)を悦…

絵本八十宇治川叙 文(ぶん)を右(みぎ)にし武(ぶ)を左(ひだり)にするは治(おさまれ)る世(よ)の つねなから安(やすき)に居(ゐ)て危(あやうき)をわすれざるは またいにしへの道(みち)ならずやされば漢(かん)の四七の 将(しやう)は兼康(かねやす)ならぬ壁(かべ)…

絵本武者鞋序 王右軍(わうゆうぐん)の筆陳図(ひつぢんのづ)を按ずるに筆硯紙墨は みな戦場のそなへなれは旌旗組練もまた 文房の外に出さるへし良工の腕を揮(ふるふ)は元帥(けんすい)の 三軍を使ふに似たり画家の六法は兵家の軍 令にことならす一幅画も人の珍…

たとへ艸序 前(まへ)に京師(けいし)何某(なにがし)の著述(ちよしゆつ)にやしなひ草(ぐさ)といへる 秀冊(しうさつ)あり是(これ)道(みち)に志(こゝろざし)ふかき人(ひと)の詩歌(しいか)書画(しよぐは)を 集(あつめ)て蔵(かく)せるを終(つい)には紙魚(しみ)のた…

序 袁中朗(ゑんちうらう)いへることあり試(こゝろみ)に漢書(かんじよ)漢史(かんし) を挙(あけ)て人に示(しめ)すに解(かい)すること能(あた)はさるに 論(ろん)なし即(すなはち)解(かい)するも亦多(をほ)く竟(とぐ)ること あたはす聴者(きくもの)は頭(かしら)…

歴代武将通鑑序 本邦(わがくに)歴代(れきたい)の正史(しやうし)を読得(よみえ)むこと大人(たいじん)といへとも 難(かた)かるへし況(いはんや)童子(どうじ)の蒙昧(もうまい)なるもの何(なん)そ是(これ)を 看(み)ることを得(え)ん爰(こゝ)に武将通鑑(ぶしやう…